短編・連作小説 20.5話 番外編 中村くん視点

僕がこの職場に入社して1ヶ月ほど。

休日の職場、午後の休憩時間。
僕はお昼を買いに裏口から外に出たとき、ガラス越しに少しだけ店内を覗いた。

川嶋さんは商品の整理をしながら、お客様とお話をしている。
落ち着いていて、必要なときにはさりげなくフォローしてくれる人。
女性だからかもしれないけれど、川嶋さんの存在だけで、店全体の空気が少し柔らかくなる気がする。

杉山さんはレジで接客中。
僕は基本、シフトの関係で杉山さんから教わることが多い。
笑顔が自然で、お客様との距離感も絶妙だ。
川嶋さんとは別の意味で、真面目さと気配りがにじみ出ている。
正社員ってやっぱり凄いな。
僕はその様子を見ながら、「いつか自分もあんな風にできるようになりたい」と思った。

店長はさっき奥で店頭の買取業務をしていた。
気さくで話しかけやすく、面接の時から良い印象だった。
いい意味でそこまで上司感がない。
少し雑なところは気になるけれど、個人的には店長と杉山さんの二人の距離感が好きだ。
足りないものを補い合っている感じがする。

水谷さんには時間や曜日の関係で会ったことはない。
でも時々お菓子と一言メモが置かれていて、そこにわざわざ僕の名前まで書かれていた。
きっと良い人なのだろう。
川嶋さんも「楽しくてとても良い人」と言っていた。
一度は会ってみたいと思っている。

僕も少しずつ、この空間に馴染んできた気がする。

「このお店って、ただ物を売るだけじゃないんだな」
人と人の距離感、空気のやり取り、笑顔の交わし方
そんな細かいことが、この店の居心地を作っているのだと、しみじみ思った。

僕もここで、もっと頑張りたい。
そんなことを思った休日出勤の一日だった。

あとがき

今回の20.5話、何を書こうかと考えました。
考えた末、新人の中村くん視点でのお話にしました。
中村くん視点での川嶋さんや杉山さん、店長、水谷さん。

仕事の中での距離感や、人との関わり方を意識の仕方。
そんな細かいことを、新人の中村くん目線で描くことで、読者にもお店の温かさや居心地の良さを感じてもらえたら嬉しいです。

おまけ
20話まで続けてみて思ったこと。
私は季節感を合わせるかでかなり迷いました。
制作している時期で多少ズレる事もありますが、日常シリーズなので出来れば合わせたいなと思うようになりました。
季節感を合わせた方が季節ネタなどを共感していただけるのではないかも思ったからです。

今後、今回のような番外編を混ぜたりなど、いろいろ試行錯誤しつつ、川嶋さんシリーズは続けていきたいと考えています。

ここまで読んでくださりありがとうございました。