短編・連作小説 過去編13 職場の居心地と人間関係 『川嶋夏希』

そして午後。お昼の時間を終えて、橘さんが休憩に入る。

「あ、川嶋さんおかえり。杉山くんに文句言っておいたからね。初日から教えすぎよって」

「え、いや、そんなことないですよ。杉山さん優しかったですし」

「まあまあ、いいじゃない。それじゃ杉山くん、あとはよろしくね」

「はい、分かりました。お疲れさまです」

「橘さん、お疲れ様です。午後もよろしくお願いします」

「よろしくね」

 そう言って橘さんは、軽やかな足取りで休憩室に向かっていった。
 すると、杉山さんが少し迷いつつ私に声をかけてくれた。

「橘さんはいつもこんな感じなので、気にしないでください。女性店長みたいな人なので。実際、以前は別店舗で店長をされてましたし」

「そうなんですね」

 やっぱり、ただ者ではないと思っていたけれど、本当に仕事ができる人だったんだな。

「疲れてはいないですか? 体調とか」

 と、杉山さん。

「あ、はい、大丈夫です。疲れはしましたけど、昨日は早めに寝たので」

「それなら良かったです。まあ、無理しないように」

「は、はい。あ、あの……」

言うか迷ったけど、私は伝えることにした。

「杉山さんには昨日、凄く助けていただきました。ですので、これからもよろしくお願いします」

 杉山さんは少し驚いたような目をしていたが、すぐに表情を和らげた。

「はい、よろしくお願いします。では、仕事を始めましょう。僕は送り買取の作業があるので、店内業務をお願いします。まずは……」

 杉山さんは今日も丁寧に説明してくれた。
そして私は店内業務を始めた。
 しばらくして休憩を終えた橘さんが戻ってきたころ、店内はちょうど落ち着いていた。

その様子を見た橘さんが

「杉山くんにいじめられなかった?」と聞くので、

「はい、優しかったですよ」と伝えると、

「え、優しいの? あの杉山くんが?」

 と橘さんは少し意外そうに笑った。
杉山さんは「まったく……」と困ったように苦笑いしていた。

「橘さん、ありがたいことに送りがたくさん来ているので、進めますよ」

「もちろん。さて、たくさん食べたし、やりますか!」

 私はその横で商品加工を進めつつ、お客様対応をした。

 途中、お金の渡し間違いをしそうになり焦ったが、店を出られる寸前で気づき、追いかけた。お客様が店舗を出る前に気づけて、本当に良かった。

 お金の取り扱いは本当に難しい。いつか慣れる時が来るのだろうか、と少し不安になった。

 そんな私に、橘さんが「気づけたんだし、まだ二日目なんだから大丈夫よ」と励ましてくれた。

そして私の退勤時間が近づいてきた時、

「川嶋さんもうすぐで退勤時間だから、帰り支度して大丈夫よ」

「橘さん、杉山さん本日もありがとうございました。またよろしくお願いします」

橘さんはやっぱり『硬いなぁ』という顔をしていたが、

「川嶋さん、お疲れ様〜。またよろしくね」

「川嶋さんお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね」

「はい、ありがとうございます。お疲れ様でした」

 こうして私は、二日目の業務を終えて、自宅へ向かう。
鞄の中には、今日書いた殴り書きのメモが入っている。 帰ったらこれを書き直そう。
まだ不安なことも多いけれど、昨日よりは、もう少し頑張れる気がする。そう思った。