短編・連作小説 過去編14 給料日と少し高めのプリン 『川嶋夏希』

そして三日目、休み、四日目と日々は過ぎていき、今日は休日。

私はATMでお金を下ろしたあと、少しだけ寄り道をした、帰り道。
気づけば、初勤務から一ヶ月近く経過していた。

この一ヶ月、レジ差異やお客様対応で何度か失敗し、周りに迷惑をかけた。

「向いてないのかな」と思うことも何度かあったけれど、ここで辞めたくないと思って出勤し続けた。

この歳で思うのもあれだけれど、近年、失業保険や傷病手当金で過ごしていた私にとって、お金の重みと有り難みを切実に感じた。

「まるで初めての新入社員みたいだな」

そんなことをふと、思った。
と言っても、正社員でもなくアルバイト。勤務日数も時給も派遣の頃より少なめだから、今後も節約はしなければいけない。

それでも、このお給料が嬉しかった。
販売という新しい環境で、一ヶ月休まず働けたことと、自分が周りの人と話せていることが嬉しかった。
閉じこもっていたところから、少しだけ抜け出せたような気がした。

うつになってから、昔から仲の良かった友達の美香と会うことすら、ずっと躊躇っていた。
この仕事をもう少し続けることができたら、また連絡をしてみたい。そんなことを思った。

初めての販売の仕事を通じて思ったこと。
それは、派遣でのデータ入力の時とも違う。
営業職と同じ「話す仕事」でも、不思議と感覚が違う。 かつてのそれは、数字を勝ち取るための「コミュニケーション」だった。けれど今は、目の前の誰かにそっと手を貸すような感覚というのかな。その小さな違い。

帰りに、駅ビルのスイーツ店で少し高めのプリンを三つ買った。 両親と会話をすると、今でも少しだけ疲れてしまう。けれど、動けなかった私をただ静かに見守ってくれた二人へ、言葉にならないお礼を伝えたかった。

信号を待っていた時、なんとなく空を見上げた。

「いい天気だな」

そんなことを思いつつ、いつもの道を歩いて自宅に着き、私はドアを開けた。

「ただいま」

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