短編・連作小説 これからよろしくね

   
私の仕事が終わる時間帯、店長が声をかけてきた。
   
「川嶋さん、この前話した大学生の新しい子、昨日から入ったんだ。
   
川嶋さんとは今日初めて会うと思うから、後で挨拶をしてほしいんだ。
   
遅番メインだから、一緒に入るのは休日くらいかもしれないけど……これから仲良くしてあげてね」
   
「昨日からだったんですね。わかりました」
   
そうして交代の時間が近づき、私はカウンター周りの片付けに取りかかっていた。
   
そこへ、ドアノブが開く音がして顔を上げる。
   
「こんばんは、今日から入ります、中村 真です。よろしくお願いします」
   
眼鏡をかけた青年がお辞儀をする。
背が高く、話し方は落ち着いた感じの人だな。
   
「あ……川嶋です。よろしくお願いします」
   
私も軽く頭を下げる。
   
「じゃあ、2人とも軽く自己紹介を」
   
店長に促され、中村さんは20歳であること、以前は家庭教師をしていたことを話した。
   
頭が良さそうなイメージだなと思いつつ、私は遅番の2人に挨拶を済ませる。
   
「では私はこれで、お先に失礼します」
   
「お疲れさまでした」
   
小さな声で返された挨拶が、思いのほか丁寧で、私は少し和んだ。
これからどんなふうになるのか。
どんな人なのかな。話しやすい人ならいいな。
心の中でほんの少しだけ、そんなことを思った。
   
   あとがき
   
後輩が増えると「どんな子なんだろう」「どんな人なんだろう」とつい気になりますよね。
   
人見知りならなおさら、相手がどんなタイプかで心の構えも変わってくる気がします。
   
でも、最初の挨拶が丁寧だったり、ちょっとした表情が柔らかかったりすると、
「大丈夫かもしれない」と、安心の種が芽生えることがあります。
   
川嶋さんにとって、中村くんとの出会いもきっとその小さな種のひとつになるのだと思います。