短編・連作小説 再会

午後になり、シフトは川嶋さんと杉山さん。

自動ドアが開き、お客様が入ってくる。
ベビーカーを押しながら、店内をゆっくり見て回るお父さん。

川嶋さんは少し迷った。
声を掛けるべきか、それともそっと見守るべきか。

すると杉山さんが川嶋さんへ目配せをし、すっとお父さんの方へ歩み寄った。
「何かお探しですか?」

その瞬間、お父さんの目が丸くなる。
「あれ? もしかして杉山?」
「あ、やっぱり岡本だったか。久しぶりだな」

二人の間に、懐かしい空気が流れた。
「何年ぶりだ? 結婚式のあと、一度会ったのは覚えてる」
「三年前くらいかな?」
「子ども、産まれたのか」
「そう、今月で一歳になってさ。男の子。最近こっちに引っ越してきてさ」

川嶋さんはそれ以上は聞かないようにしようと、軽く笑って手元の作業を続けた。

五分ほどで杉山さんは戻ってきた。
「今落ち着いてますし、もう少し話してきても大丈夫ですよ」
「いや、今度また会えそうだから」
「そうですか」

川嶋さんはそれ以上聞かず、静かに見守る。

岡本さんは子供用のおもちゃを購入してくださった。
川嶋さんも一緒に頭を下げる。
「ありがとうございました。またお待ちしております」

岡本さんが帰った後、杉山さんが少し照れくさそうに話してくれた。
「昔の大学のサークルの友達で。
ケンカとかじゃなく、普通に疎遠になってたんですけど、元気そうでよかったです」

川嶋さんは心の中で、小さくほっとした。
自分にとっても、昔の友達と再会する瞬間は、少し気負いがあった。
実際、昔の友達とは疎遠ばかりだ。

「そういえば、杉山さんの昔話って聞いたことなかったですね。
こういうのって、あまり聞いていいのかわからなかったので」

「まあ確かに。僕も川嶋さんのこととか、聞きづらいですからね」

「距離感って、難しいですね」
「ですね」

今度、機会があれば聞いてみようかと思った。

杉山さんと岡本さんを見ていたら、昔の自分も、あんな風に友達と笑っていた時もあったなと懐かしくなった。

今後、人と人の間にある距離感が、少しずつ心地よく思える瞬間があるのだろうか。
この人になら話してもいいと思えるような人がいるのかな、とふと思った。

あとがき

今回のお話は、「話し方」がテーマです。
人と人の距離感や、久しぶりに会う誰かの笑顔にふと温かさを感じる瞬間を描きました。

川嶋さんの視点で見ると、仕事中の杉山さんと、プライベートの杉山さんの違いが見えてきます。
普段は物腰柔らかく、仕事中は少し堅くなる。
そういう面を知ることも、日常の楽しさの一つだと思い、このお話を書きました。