面接から6日後。
「一週間以内にご連絡します」と言われていた面接。
あまり考えないようにしようとしていたけれど、やっぱり落ち着かなかった。
今までの面接の中で、一番うまく受け答えができた気がしていたから。
そんな時、スマホの通知音が鳴った。
あ……あのお店からだ。
私は小さく息を吸って、呼吸を整え、メールを開く。
この度は面接にお越しいただき、ありがとうございました。
選考の結果、採用とさせていただくことになりました。
初回出勤日につきまして、面接時に伺った日程で問題ないか、改めてご確認いただければ幸いです。
え、採用……!?
文字が目に飛び込んできて、しばらく動けなかった。
指先がじんわり震える。嬉しさなのか、緊張なのか、自分でもよくわからない。
あ、返信しないと。
震える指で慎重にスマホを操作しながら、最後に「よろしくお願いいたします」と加え、もう一度誤字がないかを確認してから送信した。
受かった。
受かったからには、面接で言った通り、本当に頑張らないと。
面接で何度も「一生懸命やります」と言ったんだから、嘘にはできない。
クビになるわけにはいかない。
とりあえず……ハローワークの相談員の方に連絡を。
電話をすると、今日は担当の相談員の方がいらっしゃるとのことで、私はそのままハローワークへ向かった。
相談員の方は驚いた顔をしていた。
まあそうだよね。
事務職を探していた私が、まさか接客業、それも買取の仕事を受けるとは思わなかっただろう。
「でも……よかったですね。川嶋さんなら、きっと続けられると思いますよ」
「ありがとうございます。頑張ります」
その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなった。
失業保険関連の手続きも済ませたが、また後日来ることになるらしい。
帰り道、少し遠回りして大きめの書店へ足を運んだ。
接客についての本を探そうと思ったからだ。
ネット注文でもよかったけれど、手元に届くまで時間がかかる。
少しでも早く読みたかった。
本屋に入ると、紙の匂いがふわっと広がった。
私は電子書籍より紙の本の方が好きだ。
接客……接客……。
棚を見ていると、途中で「前向きな考え方」の本が目に入った。
何ページかめくってみる。
前向きか……。私も、もう少しそうなれたらいいのに。
でも今は、まだ怖い。
また以前のように心が追い詰められてしまったらどうしよう、と。
それでも、今はその事を考えてはいけない気がすると、どこかで思っていた。
接客の本はたくさん並んでいた。
お店の経営、販売士検定、コミュニケーション、接客の心構え……。
いろいろ手に取って迷った末、「初めての販売」という読みやすそうな本を選んだ。
他に気になった本は写真に撮っておいた。
後日、欲しくなったらネットで買えばいい。
買取についてはネットで調べるしかなさそうだ。
ピンポイントな本は見つからなかった。
帰宅して身支度を終えると、さっそく本を開いた。
接客8大用語から始まっていて、文字も大きめで、挿絵もある。
これなら最後まで読めそうだ。
勤務日まで、まだ一週間ある。
なるべく頭に入れておきたい。
ノートも用意して、重要そうなところを書き写していく。
勉強していれば、今は余計なことを考えずに済む。
……いつぶりだろう、こんなふうに前向きな準備をするのは。
以前、私は「明日なんて来なければいい」と思っていた。
でも今、ほんの少しだけど、前へ進めている気がする。
この後、私はビジネスマナーや話し方の本も購入し、ひたすら勉強した。
結局3冊全ては読み終わらなかったけれど、働き始めてからも役に立つと思うから。
そして、当日の朝がやってくる。