短編・連作小説 過去編④ 片付けの先にあった小さな出会い 『川嶋夏希』

お婆さんとの出来事から数週間が過ぎた。

私はまだ就職活動をしている。
失業保険はもらえているものの、今後のことを考えると不安が募り、私は部屋の掃除をすることにした。断捨離をするためだ。

数日かけて部屋を片づけ、必要なものといらないものを分けていった。その中で、お金になりそうなものを数点取り分けた。昔の携帯ゲーム機、大学時代に使っていたバッグやお財布、アクセサリー、グッズなどだ。

ネットで、家から行ける範囲で何でも買い取ってくれそうなお店を探し、そこへ向かった。

普段行かない場所なので、地図アプリを見て確認しながら向かう。
通りの中にある買取専門店としては小さめな店舗。
所謂、ブランド品買い取りますみたいな雰囲気ではなく、下町のような雰囲気に感じた。

そして私は入店した。

「いらっしゃいませ」

背の高い声が大きめの男性店員が声をかけてくれる。
私はその男性の元へ、不安ながらに歩いていく。

「あ、あの……買取ができるとネットで見かけて」

「はい、もちろん承ってますよ。こちらにお品物お願いします」

私はカゴに査定をお願いする商品を入れていく。

「これで全部です」

「ありがとうございます。ではまず、こちらにご記入お願いします」

「はい」

私が用紙の記入をしている間、男性店員は商品を一つひとつ見つめていた。

いくらになるのだろう。
そう思いながら、私は用紙の記入を進める。

「終わりました」

「ありがとうございます。では、30分以降にまたいらしてください」

「わかりました」

店を出るとお腹が空いたなと時計を見た。13時20分。
カフェなどの外食は流石に控えようと思った。少しでも節約しないと……。

コンビニでおにぎりとパンを買い、歩きながら見つけた公園のベンチで食べることにした。

公園なんて、なんだか懐かしい。最近は来ることもなかった。

少し肌寒かったが、日差しは暖かく、コンビニの簡単なご飯でも妙においしく感じた。

気づけば30分が過ぎ、私はお店へ戻った。

先ほどの男性店員がレジで会計の対応をしていた。

「ありがとうございました。またお待ちしております。
あ、先ほどの方ですね、お待ちしてました」

ハキハキとした声が続く。
そして査定額の用紙を見せてくれた。

「査定額はこちらですが……いかがですか?」

すべて合わせて4,000円。

高いのか安いのか、正直よく分からない。もともと処分するか迷っていたものだし、十分だと思った。

中でもお財布が一番高く値段がついていた。昔、福袋に入っていたものだ。色が微妙で一度も使わなかった財布。少しでも足しになるなら、まあいいか。

「お願いします」

「ありがとうございました」

店員はふと、私に声をかけてきた。

「あ、買取とは関係ないんですけど」

「?」私は首を傾げる。

「その時計、すごく使い込んでますね。相場としてはそこまで高い金額ではないですけど……大事にされてきたんだなって。これからも大事にしてくださいね。余計なことだったらすいません」

「あ、いえ。ありがとうございます」

私は手首の時計を見た。
この時計は、祖母が母の20歳のときに贈ったものだと聞いている。そして母は、私が20歳になったときにこの時計をくれた。それ以来ずっと身につけてきた。

(買取のプロって、こういうところまで分かるんだ)
そんなことを思った。

お金を受け取ったあと、店を出る前にふと店内を見渡した。

ほかにどんなものが置いてあるのだろう。自宅に売れそうなものはまだあるだろうか。

広い店ではないが、玩具からガラスケースのブランド品まで、さまざまな商品が並んでいた。こういうお店、今まで来たことなかったかもしれない。

見回していると、壁に「従業員募集中」と書かれた張り紙が目に入った。

このご時世に、マジックで書かれたシンプルな手書き。ちょっと面白い。

短時間アルバイト、または正社員募集。
未経験大歓迎。
学生、主婦、フリーター大歓迎。
土日祝できる人歓迎。
時間や曜日は応相談。
時給〇〇円〜。

その中の一文がふと目にとまる。

「買取に必要なのは、ちょっとした親切な心配り! 経験なんていらないよ」

ちょっとした親切、心配り……。

私はなんとなく、そのポスターの写真を撮った。
そして私は、そのままお店の外へ出た。

接客なんて向いてないと自分が一番分かっているのに、どうして私は写真なんて撮ったんだろう。

ふと、あの帽子の男性やキャリーカートを引いていたお婆さんの姿が頭に浮かんだ。

そのまま私は、自宅へ向かった。