短編・連作小説 過去編⑤ 一歩踏み出した日 『川嶋夏希』

買取をしてもらった日から、さらに10日が過ぎた。

以前応募していた事務系の書類選考は、二件とも不採用だった。面接まで進めた軽作業の仕事も、手応えはほとんどなかった。

複数人の面接や圧の強い面接官が相手だと、途端にうまく話せなくなる。今回も例外ではなく、頭が真っ白になり、言葉が詰まってしまった。

その日は平日の昼間。少しだけ窓を開けると、小学生たちが楽しそうに帰っていく姿が見えた。今日はあまり寒くないんだな。最近は家にこもってばかりだったので、外の空気を久しぶりに感じた気がした。

これからどうしようかな……。

ふとスマホを手に取り、10日前に撮った求人募集の写真を思い出した。

あの買取店の求人。まだ募集しているかどうかも分からない。

あ、メールアドレスも書いてある。電話よりメールのほうが気が楽だ。私は、募集状況を尋ねる文章を打ち始めた。

データ入力の仕事が長かったせいか、こういう定型文は手が覚えている。あとは送るだけ。

でも、指が震える。

あ……。

気づけば画面が暗くなり、スリープ画面に戻っていた。もう一度電源を入れ直す。

頑張れ、私。

震えた指が、偶然なのか必然なのか――気づけば、送信ボタンを押していた。

五分もしないうちに通知音が鳴った。返信が早い。

「この度は求人募集にお問い合わせいただきありがとうございます。まだ募集しております。つきましては面接をお願いしたく、ご都合のよい日程を教えてくださいませ。」

まだ募集してたんだ……。嬉しさと焦りが一気に込み上げた。

か、返事を返さないと。私はすぐに希望日と時間を送った。

今度は10分ほどで返信が返ってきた。

「では、明日の〇〇日17時にお待ちしております。履歴書と職務経歴書をご持参のうえ、店舗までお越しください。入店後、面接の予約をしているとお伝えくだされば対応いたします。」

こうしてやり取りは終わった。

明日か。思ったより早い。でも、考えすぎる前に行けるほうがいいのかもしれない。

履歴書と職務経歴書は日付を直してコピーすれば大丈夫だし、夕方なら十分間に合う。

ハローワークの相談員さんへの報告は、結果が出てからでいいか……。正直、最近落ち続けていて、相談に行くのもちょっと気が重くなっていた。

面接、誰がするんだろう。あの店員さんかな。

私はずっと事務系ばかりで探してきた。でもデータ入力はもうできないと思って一般事務に応募してきたし、同じ作業を繰り返す軽作業は、以前のトラウマが残っていてどうしても怖い。

積まれていくだけの作業が、頭にちらつく。あの時の光景を思い出すたび、胸の奥がきゅっとなる。

だから、販売なんて選択肢にはなかった。

そう思いつつ急がないとと思い、志望理由を考え始める。
私は書類作成の作業を進めた。