初日の仕事を終えた私は自宅に着き、ドアを開けた。
「ただいま」
「あ、夏希おかえり」
母が玄関前まで来てくれた。おそらく心配してくれたのだろう。
おかえりと声をかけてくれても「大丈夫だった?」など、そこまで母は話さない。
私が一度過去に鬱だった時、「何でも聞くのやめて!」
と話してから母も父もそこまで詳しくは聞かなくなった。
玄関前まで来たのは私の顔色を見るためだったのかもしれない。
別にご飯の時でもいいのにと思った。
「ご飯出来てるわよ」
「うん、ありがとう」
私は荷物を置き、手洗いうがいを済ませ、リビングへ向かう。
少し休みたかったけど、お腹も空いていた。
食卓には、私の好きな唐揚げと、彩りのいい煮物が並んでいた。
「明日も仕事よね」
母が箸を動かしながら、聞いてきたので私は
「うん。とりあえず、大丈夫そう」
嘘ではない。でも、いつまで続くかなんて自分でも分からない。
「そう、それなら良かったわ」
「うん、ありがとう。ご飯美味しかったよ。ご馳走様でした」
今日のご飯は私が好きなものが多く、いつもより少し豪華な気がした。
母が私に気を遣ってくれていることが伝わってきた。
「お風呂はもう少し待ってね」
「うん、わかった」
会話はそれだけだった。仕事の事は話せなかった。
まだ続く保証もなかったから。
そうして私は食器を片付け洗ってからリビングを後にした。
私は自分の部屋へ戻った。
ドアを閉め、「ふぅ〜」とため息が出た。やっと落ち着けた気がした。
こんなに一日中誰かと話したり、言葉を発したりしたのは久しぶりだった。
いや、今までもそんなに話す方じゃなかったか。
初めてのことばかりだったな。
でも最後までちゃんと働けた。明日も仕事かぁ。
しばらくぼーっとしていたら、部屋の外から母の声がした。
「夏希、お風呂沸いたけど入る?」
「うん、入る」
そうして私はお風呂場へ向かった。
もう少しゆっくりしたかったなとは思ったけど、順番がある。
求職中だった頃と変わらない、いつものことなのに何か違和感を覚えた。
お風呂から出た私はそのままベッドに入りたかったが、テーブルに向かい、今日書いたメモを別のメモにわかりやすくまとめた。
明日は女性の方が教えてくださると言っていた。
少しでも迷惑をかけないようにしないとと思ったから。
メモを書きながら、目が自然に閉じていく。
あ、歯を磨かないと。
部屋を出て歯を磨き、他にも寝る支度を済ませてベッドに入る。
「明日も、頑張れますように」
そんなことを思いながら自然と目が閉じていき、私は眠りについた。