短編・連作小説 ツツジまつり

今日は休日。朝から雲一つない、透き通るような晴天だ。

「よかった、晴れて」

窓から差し込む陽光に、思わず独り言がこぼれる。

軽く朝食を済ませると、私は少しだけ急いで支度を始めた。向かうのは、以前ネットで見かけてからずっと気になっていた場所だ。

昨秋、一人でバラ園へ足を運んでからというもの、季節の花を追いかけるのもいいなと思った。

「わぁ……綺麗」

目的地である神社の境内に一歩足を踏み入れると、鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。そこでは「ツツジまつり」が開催されていた。

平日の朝一番なら空いているだろう、という私の予想は見事に外れた。

「やっぱり、人気なんだな」

券を買い中へ入ると、すでにたくさんの人で賑わっている。

窮屈さを感じるほどではないけれど、写真を撮ろうとスマホを構えると、どうしても誰かの後ろ姿がフレームに収まってしまう。そんな混雑さえも、この景色を見たら、どうでも良くなってしまう。

(綺麗だなぁ……)

赤、白、ピンク。こんもりと丸く整えられたツツジの山を眺めながら、ゆっくりと歩を進める。 周りを見渡すと、老夫婦やカメラを抱えた若者、熱心に説明書きを読んでいる外国の方など、様々な世代の人がそれぞれのペースでツツジを愛でていた。

かつての私なら、人混みに気後れしてすぐに帰っていたかもしれない。けれど、最近はそこまで気にならなくなってきた気がする。

しばらく楽しんだ後、私はツツジ園を後にし、本殿への参道へ向かう。
一歩進むごとに、神社特有の静けさに近づいていく。
私は、この静かな空気が好きだ。

いつものように、二礼二拍手一礼。
心の中でお参りをし、顔を上げる。

授与所に向かうと、季節限定のツツジが刺繍されたお守りを見つけた。
淡いピンク色の刺繍がとても可愛かった。
買うか迷ったけれど、私は自分へのお土産として一ついただき、一礼して境内を後にした。

「お昼、どうしようかな」

お腹が空いてきた。神社の近くにある商店街へと足を向ける。 香ばしいお団子の醤油の匂いや、揚げ物の香り。
活気ある呼び込みの声に誘われ、右往左往してしまう。

「美味しそうな店がいっぱいで、迷うなぁ……」

結局、どのお店も満席に近かったので、食べ歩き用のお惣菜をいくつか買い、気になったデザートは持ち帰り用として買った。

少し歩くと、入り口に大きな木が立つ公園を見つけた。

(ここで食べようかな)

日当たりのいいベンチに腰を下ろす。

「ちょっと日差し強くて暑いけど、いいか」

日焼け止めはきちんと塗ってきたし、食べたらすぐ帰ればいいよね。

そんなことを思いつつ私は、テイクアウトしたばかりのコロッケとベーグルを食べる。

「……美味しい」

やっぱり外で食べるご飯は、美味しいな。
デザートに買ったカヌレは帰ってから食べよう。

ふと、「帰ったら溜まった洗濯物を片付けなきゃ」という現実的な思考が頭をよぎる。

「でも、いい休日だったな」

ゴミを鞄にしまい、私は駅までの道のりを歩いた。


あとがき

今回は根津神社と谷中商店街を舞台にして見ました。
私は一度だけ根津神社に参拝しに行ったことありますが、ツツジの時期ではなかったので、いつか行ってみたいなと思いました。
今が時期なので、興味のある方はぜひ調べてみてください。