短編・連作小説 新学期

四月の昼下がり。店内には、暖かな日差しが差し込んでいた。

時間は十二時を少し過ぎたころ。 自動ドアが開いた。

「いらっしゃいませ」 

レジカウンターで商品の検品をしていた私は、顔を上げて声を出す。
入ってきたのは、四人の学生たちだった。その姿がなんとなく目に止まった。
彼らが着ている紺色のブレザーは、まだ生地に硬さが残っていて、折り目も新しい。 足元のローファーも綺麗だった。

(新入生かな……) 

そんなことをぼんやりと思っていると、水谷さんが呟いた。

「新入生かしら。制服が新しいし。新学期っていいわね、なんだかこっちまで新鮮な気持ちになるわ」

水谷さんが、笑顔でそう言った。
彼女の顔を見ていると、私の口元も自然と少しだけ上がった。

「そうですね。四月ですし、春だなと感じます。水谷さんは、春は好きですか?」

と私が尋ねると

「はい、好きですよ〜。春は出会いの季節ですから」

水谷さんは、迷いのない声で答えた。
彼女らしい、真っ直ぐで明るい言葉。

「でも……出会いもありますけど、別れもありますよね」

仲の良かった人達との別れて、新しい道に進む。
慣れ親しんだ場所を離れ、また新しい場所で、人間関係に揉まれる不安もあるだろう。

「まあ、確かにそうね。でもね、川嶋さん。別れがあるから、新しい出会いもあるのよ」

「新しい出会い……」

彼女はそこで一度言葉を切ると、私の方を向き、悪戯っぽく笑った。

「……例えば、私と川嶋さんが、ここで出会えたみたいにね。
私、ここで働くことになって、川嶋さんと出会えて良かったって思ってるのよ〜」

あまりにも真っ直ぐな、 水谷さんらしい言葉がとても嬉しかった。

「ありがとうございます。私も水谷さんと会えて嬉しいです」

するとフロアから呼び声が聞こえた。

「すいませーん!」

 店内に、先ほどの高校生たちの元気な声が響いた。

「あ、私が行ってきますね〜」 

水谷さんは彼らの方へ歩み寄っていった。

「これ? これはね、最近入ったばかりで割とレアものよ。ちょっと見てみますか?」

すぐに学生たちと打ち解け、笑い合っている彼女の背中を見ながら、やっぱりコミュ力高いなぁ、と私は心の中で感心した。

(別れがあるから、出会いがあるか)

前の職場を辞めたあと色々あったけど、私は今、お店で皆さんと働いている。

これも何かの縁だったのかな。 そんなことを思いつつ仕事を続けた。
春の日差しは店内にいても眩しく感じた。

あとがき

4月になり、新入生、新学期の季節になりましたね。
私は通勤時間帯の電車に乗ると、特にそう感じます。

私は最近、一つの別れがありました。
でも新しい出会いもありました。

そのことをふと思い出して、今回このお話を書きました。

皆さんにも新しい素敵な出会いが訪れますように。

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