短編・連作小説 誕生日

7月30日。
私はいつも通り仕事だった。

LINEの通知が一通届いていた。

LINE公式から来る誕生日のお祝いメッセージ。
それ以外は特に来ていなかった。

「まあ、そうだよね……」

特に気にもしていなかった。

誕生月になるとよくある、ショップの割引などと同じだ。

逆に仕事があってありがたかった。
何も考えなくていいから。

いつも通りに出勤。
今日は午前中は一人だった。

午後になり、店長と一緒に仕事をする。
特に変わらない一日。

夕方になり、遅番の中村くんが出勤してきたので、挨拶をした。

「中村くん、お疲れ様です」

「お疲れ様です。そういえば、川嶋さんって今日誕生日なんですよね。おめでとうございます」

「え?」

「あ、うん。ありがとう。でも何で知ってるの?」

「LINEで見ました。誕生日が近い人って表示されるじゃないですか。今日会うし、せっかくならと思って。」

言われてみれば、と思った。
登録していないと、公式から誕生日通知は来ない。

それと同時に、そんなお知らせがあっても、誰からも連絡が来なかったのか。と思うと、やはり少し寂しくなる。

今日初めて中村くんに言われて、その一言が嬉しかった。

「中村よ、もう少し待てばよかったのに」

と店長が苦笑いした。

「?」

「川嶋さん、帰りにテーブルのお菓子持っていってね。みんなからです。といっても、提案は水谷さんだけどね。僕と杉山くんと水谷さんから。まあ、たいした額は出してないから気持ちだけど」

「え? あ、ありがとうございます。嬉しいてわす」

「僕払ってないですけど。仲間はずれにしたんですか?」

「学生に出してもらうのはね」

「そういう時だけ、子供扱いですか?」

そう言って、少し眉を上げる中村くん。

「まあまあ。中村が誕生日の時も何かあげるから、辞めずに頑張れよ」

「僕の誕生日知ってるんですか? 僕はLINEに誕生日載せてないですけど」

「じゃあ今、教えて」

と店長。

「仕方ないですね」

そう言って私にも誕生日を教えてくれた。

なんか杉山さんみたいだ、と少し思ったが黙っていた。

「ありがとうございます」

と誕生日を教えてもらった中村くんにお礼を言って、引き継ぎを終わらせ、私はロッカーへ向かった。

テーブルには、小さなプレゼント用に包装された赤い箱があった。

「川嶋さん、誕生日おめでとうございます。
素敵な一年になりますように」

と、可愛いメッセージカードも貼られていた。

字を見た感じ、おそらく水谷さんの字だろう。

「可愛いな」

そんなことを思いつつ、私はプレゼントを鞄にしまい、職場を後にした。

「帰ったら開けるの楽しみだな」と思いつつ。

そして電車に乗り、日記を書こうと思ったら、LINEの通知が3件来ていた。

美香と水谷さん、最近LINE交換したばかりの橘さんからも来ていた。

スタンプや一言添えられたメッセージだった。
電車の中で、少しだけ目が滲んだ。

ありがとう、皆さん。
この一年、私は少しでも頑張れたのかな。

帰りにお弁当と一緒にケーキも買って帰ろう。
何がいいかな。

電車の窓の外を見ながら、そう思った。


あとがき

川嶋さんの誕生日のお話です。

なぜ7月30日にしたのかというと、川嶋さんシリーズ第1話を投稿したのが7月30日だからです。

川嶋さんと紡ぐ春夏秋冬がテーマだったので、その日にしようと決めていました。

川嶋さんシリーズがあったからこそ、私はnoteを1年間続けることができました気がします。ありがとうございます。

そして川嶋夏希さん、誕生日おめでとう🎉
素敵な一年になりますように。

始めて投稿した短編 第一話はこちら↓

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